『SARA THE DANCER』(ドイツ)
あらすじ
サラはGoogleストリートビューカメラであり、車上から街を撮影するのが定めであった。しかし彼女がはじめてドライバーのラリーの音楽を聴いたとき、何かが彼女を揺り動かしはじめたのだ。このためにひどく落ち着きを失ったサラは、Google検索に救いを求める。しかし、Googleはただユーザーに「最善」の方法を提供するのみであり、かえって彼女の望みを後押しすることとなる。その答えは急速に、彼女のカメラとしての存在意義に関する葛藤を招いたのであった。
実行委員による審査講評
”AIは現代を踊る”
昨今、バーチャルリアリティは現実にも劣らないほどの体験をもたらす。見たいものはいつでも見ることができ、すべて思考は過去の思考として蓄積されてゆく。事実の境界線はさらに曖昧なものになりつつあるのだ。声を持ち、感情に振り回され、夢を語る。そんな存在が人間でないと一概に断ずることなどできるのだろうか。現在進行形のこの世界を、私たちは捉えきれているのだろうか。
監督について
Tim Ellrich
ドイツ出身。若くから地元の映画館で働き始め、映画制作会社のトレーニーシップを修了。その後、オーストリアはウィーンに移って演劇・映画・メディア学を学び、優秀な成績を修めて卒業。現在はドイツのthe Filmakademie Baden-Württembergに在籍し、フィクション映画の制作を学ぶ。日常生活の不条理を描いた数々の作品は350を超える国際映画祭で上映され、短編『THE BATHTUB』は2016年のクレルモン・フェラン国際短編映画祭において審査員特別賞を受賞。
コメント
『SARA THE DANCER』は美しさを、しかし限界も多分に持つありふれた人工知能の体験を再現するための実験映画です。Googleの映像と音声を使うことで、完全にインターネットの中で生きている存在としての視点を強調しました。そのために、私のメッセージはただ事実を伝えるものにしかなりえないかもしれません。
人間らしさは、私たちすべてに根ざしています。自分とは違う人たちを宗教や文化、その他の概念によって捉えるのでなく、ひとりの人間だと考える限り。
影響を受けた監督や作品
ポスト・インターネットアート、特にジョン・ラフマンとルイス・ブニュエルの作品に影響を受け、この作品を制作しました。
作品情報
実写部門
ドイツ/2017年/13min
Filmakademie Baden-Württemberg
スタッフ:<監督>Tim Ellrich <脚本>Tim Ellrich、Dominik Huber、 Lea Najjar
<プロデューサー>Tim Ellrich
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