『トオリ雨』/ 日本

あらすじ

漫画家を目指す青年は、家の壁に絵を描いている主婦と出逢う。青年は毎日絵を見にいくようになるが、彼女は完成したら絵を消してしまうつもりであった。長回しと即興演出で描いた、ふたりきりの物語。


実行委員による審査講評

"作為から遠く離れて"

この映画には劇的な展開はおろか台本さえ存在しない。やはり計算された演技など欺瞞でしかないし、そこに何か人間の精髄めいたものが宿るとは思えない。CG技術のおかげで映画の何もかもが制御できると言っていい時代に、即興演出を採用する監督の信念を讃えたい。そしてその手綱から自由になった二人の役者はいかなる化学反応を起こすのか、そこにご注目いただきたい。


監督について

稲田眞幹

1994年生まれ。幼少期の頃にホームビデオで近所の友達と映画を撮ったりしていました。意識して撮り始めたのは高3でした。それまでは漫画を描いて編集社に持ち込みをしておりました。高3で撮り始め、大阪芸術大学在学中に撮り続け、4年の時に撮った映画が映画祭に入選致しました。そして、今大学5年目を迎えております。


コメント

今回上映して頂く「トオリ雨」は、主人公二人以外はまったく人が登場しません。画面に登場する人物は二人だけです。孤独を描くには、大勢の中でポツンといる方が演出できるかとも思うのですが、まったく誰もいない、この世界に二人しかいない様に描く方が孤独感が出ると思いましたし、僕はそちらの方が好きです。エドワード・ホッパーの作品の様な映画を今後も創れたらと思います。観に来て頂けますと幸いです。


影響を受けた監督や作品

フランソワ・トリュフォー、アキ・カウリスマキ、北野武、ロバート・アルドリッチ

『シベールの日曜日』、『ショー・ミー・ラヴ』、『人魚伝説』、『大人は判ってくれない』、『ベティ・ブルー』、『HANA-BI』、『街のあかり』


作品情報

2016年
大阪芸術大学
61min<実写部門>
キャスト:圓谷健太、石本径代
スタッフ:稲田眞幹、南都喜一郎、山根菜和子、加藤綾乃、辻村ひかる、上原沙也、黒田潤平、一井瑛恵、藤沢柊