『ALICE』(原題:Kamakshi) / インド
あらすじ
80歳の老婆は馬を携えて井戸を掘っている。喉の渇きから幻覚を見るようになった時、ある少女が現れる。やがて深く掘り進めた井戸から水が噴き出し、砂漠に緑が萌え、馬の喉が潤される。
実行委員による審査講評
"フィルムと湿潤の戯れ、生命の誕生"
荒涼な砂漠の中、水を渇望する人間の根源的な欲求と、それがもたらす困難をすべて一身に引き受ける老婆。彼女の顔に刻まれた皺や滾々と湧き出る水をモノクロのフィルムでフェティッシュに切り取ったこの映画は、神話さながらの重厚な物語世界を構築している。一切の通俗性とは無縁の世界に生きようとする監督の芸術的なストイシズムに畏れ入る。
監督について
Satindar Singh Bedi
1980年、インドのムンバイ生まれ。チェンナイで経済を学んだ後、マハーラーシュトラのFilm and Television Institute of Indiaにて映画監督の学位を修得する。本作『ALICE』が卒業制作。
コメント
この映画は、渇きと老いの気概ゆえに水を探し求めたことによって継起された啓示的な瞑想のようなものです。将来、人々は水を手にする権利を失い、世界のあらゆる水は企業の占有物となるかもしれないと、どこかで読みました。そういう考え方に対する疑念がこの映画を作ったきっかけです。自然は人間から自由なものであり、売り買いされるべきではありません。憎しみと所有の概念が支配する今日では、自己犠牲の精神をもつ人物こそが、生命に希望と再生をもたらしうるのです。
影響を受けた監督や作品
アンドレイ・タルコフスキー『鏡』『サクリファイス』『アンドレイ・ルブリョフ』、 セルゲイ・パラジャーノフ『火の馬』、ロベール・ブレッソン『ラルジャン』『バルタザールどこへ行く』『田舎司祭の日記』 、黒澤明、小津安二郎、ビジャイ・アナンド
作品情報
2015年
Film and Television Institute of India, Pune
25min<実写部門>
スタッフ:<編集>Kratika Adhikari <撮影監督>Rangarajan Ramabadran <美術監督>Umesh Suryavanshi <音響>Sandro Sadhukhan
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